「非常識。まったくナンセンスです」

 こう憤るのはスポーツジャーナリストの谷口源太郎氏だ。

 19日付の日刊スポーツの1面に掲載された「日程まで変更! 清宮仰天特例」の記事。この日の準決勝で仙台育英に敗れた早稲田実業の清宮幸太郎は、1年生ながら28日から行われる野球のU18W杯の代表メンバーに内定している。日本が順当に勝ち進めば、決勝戦は9月6日。来年のセンバツ出場がかかった東京都の秋季大会は9月5日開幕のため、清宮不在を避けるべく、早実だけ出場日をずらすというのだ。

 記事中では東京都高野連関係者が「早実の試合は、1週間遅らせることを考えています。(U18W杯のメンバーに)正式に選ばれれば名誉なことだし、日本のために頑張ってもらいたい」とコメントしている。

 冒頭の谷口氏が言う。「高野連は『高校野球はあくまで教育の一環』という主張だったはず。彼個人のために日程をずらすなんて、理屈にもなっていません。高校野球は甲子園至上主義になりすぎて、越境入学やスポーツ推薦などさまざまな問題が噴出した。それでも最近の高野連は『野球特待生は5人以下が望ましい』と言うなど、多少はマトモになってきたのかと思っていましたが……。清宮だけを特別扱いするのが、教育の一環という原点からいかにかけ離れた発想か高野連はわかっているのか。堕落の極みですよ」

■東京都高野連を直撃すると…

 清宮は今夏の甲子園では特別扱いを受けていた。3日の抽選会ではひとりだけ別室で待機。大会期間中の宿舎も、警備に不安のある甲子園に程近い場所から変更になった。混乱を避けるためにやむを得ない措置とはいえ、清宮ひとりのために早実の日程だけずらすという今回の話はまったく種類の違うとんでもない話。えこひいき以外の何ものでもない。早実が秋季大会で負けたら、春のセンバツに出場できなくなる。高野連はそれを阻止したい。とことん清宮フィーバーの恩恵を受けたいのだ。

 周囲からは「早実が秋の都大会で優勝しなくてもベスト16に入れば、21世紀枠で選ばれるさ」という声すら上がっている。

 野球ファンの矢口高雄氏(漫画家)は「早実の試合はずっと見ていました。確かに清宮君はいい打者だと思いますが……」とこう続ける。

「1年生でもワールドカップの日本代表に選ばれても不思議ではないでしょう。でも、清宮君のために早実の試合だけ秋季大会の日程を遅らせるということが本当なら、それはいくらなんでもやりすぎです。高野連は清宮、早実人気を利用して、高校野球を盛り上げたい。でも、決められている日程をひとりの選手のために動かすというのはどう考えてもおかしい。他校から批判の声も上がるのではないか。そもそも本当に力のある選手というのは、周囲が放っておいても実力でスターになっていくものです」

 本当に早実だけ日程をずらすのか、日刊ゲンダイが甲子園の大会本部に電話したところ、「担当者不在」との答え。東京都高野連にも確認したが、「理事や理事長などが甲子園に行っているので確認が取れません。我々もニュースなどを見て、そこで(日程をずらす記事を)知ったものですから……。理事の中で構想中ということはあるかもしれません」との回答だった。
http://www.rmt-kames.jp/AION/

コメント